海底はホラー映画レベル――伊良部島の海から伝わる、ある漁師の祈り
透き通る青い海。その水面の下に広がっているのは、本当に豊かな自然なのでしょうか。伊良部島で蟹漁を営む蟹蔵さんは、子どもの頃に遊んだ海と今の海を比べて、海底はもうコケがびっしりついて何もいない、正直言うとホラー映画レベルだと教えてくれました。今回お話を聞いたのは、その蟹蔵さんです。
蟹漁師になった本当の理由
蟹蔵さんは、蟹が好きで蟹漁師になったわけではないといいます。海の大本は陸であり森であり、その森に最初に接している入江の頂点の生物が蟹だから、その頂点を主役にしたのだと教えてくれました。
蟹だけを増やすことは不可能で、蟹が増えるには餌も増えなければならず、プランクトンが発生しなければならず、それは周辺の森に関わってくる。すべてがうまく回って初めて海が豊かになり、ビーチや珊瑚や豊かな資源が残る。それを追求すると、幸せとは何かというテーマにたどり着くのだといいます。
叔父・叔母の時代は天国、自分の子ども時代でも今の100倍
蟹蔵さんによると、叔父や叔母の世代が語る伊良部島は天国のようだったといいます。そして蟹蔵さん自身が子どもの頃、高校を卒業するくらいまでも、海は今の100倍綺麗だったと教えてくれました。
ビーチが溢れ、少し行くと枝珊瑚がカラフルで歩けないほどで、サザエやウニや伊勢海老を取ってバーベキューをして遊んだ。それが今、ほぼないのだといいます。叔父・叔母の時代はさらに次元が違うほど豊かで、それをシミュレーションすると未来を一緒に考えられるとも話してくれました。
ただし、地球温暖化のせいにしてはいけないと蟹蔵さんは言葉を選びます。触っていない島ではビーチも珊瑚もまだ元気で、要は地球温暖化の影響を受けやすくなるほど島が弱ってしまっているということだそうです。
真っ赤になる海と、ホラー映画レベルの海底
台風が来なくても低気圧で大荒れの日、海は真っ赤になるといいます。森がないため赤土が流れ、そこには農業の化学肥料や農薬が混ざっている。
翌日には海はピタッと綺麗に見えるけれど、海底にはコケや藻が貼りつき、何もいない。パッと見の透明さに騙されてはいけないと蟹蔵さんは言います。
死にかけて気づいた、与える側になることの楽さ
なぜここまで自然のことを考えるのか。蟹蔵さんは、実は死にかけたことがあると打ち明けてくれました。昏睡状態で苦しんだ時間が100年のように長く感じられ、生き返った時に気づいたのは、愛をもらい続けて苦しんでいたということ。与えた方が楽だと知ったといいます。
伊良部島に帰ってきて、子どもの頃遊んだ場所がほぼ全て壊滅状態で、愛されていないと感じた。だから自分の溢れた愛をそこに向けたいと思ったのだそうです。
木を植え続ける漁師
蟹漁師になったのは20代前半。最初の1年は年収20万円ほどで、また違う意味で死にかけたといいます。それでも木を植えながら蟹を増やせば成り立つと信じて続け、海中を借りて蟹の養殖場を整え、木を植え続けるうちに蟹の生産が上がってきたと教えてくれました。
蟹は神様の贈り物で、頂いた蟹を還元するには昔の人が大事にしてきた森や歌、つまり自然に返さなければならない。それが神様への感謝なのだといいます。
マングローブも、ゴミ拾いも、正解とは限らない
環境活動なら何でも良いわけではないとも蟹蔵さんは言います。伊良部島にもともとマングローブはなく、植えた10年後には陸地化して、魚の赤ちゃんが乾燥して死ぬトラップになる。
日陰になって殺菌作用が失われ、葉が腐って外海のビーチまで黒くしてしまう。ゴミ拾いで木を切ってパラソルを立てて綺麗にした島より、ゴミがあっても生き物がたくさんいる島の方が、実は自然が残っているのだと教えてくれました。
考えではなく、想いを
データを示さなければ人は信じない、けれどお母さんは子どものことをデータで育てない、想いで育てる。蟹蔵さんが繰り返したのはこの一点でした。
自然を我が子のように思えば、何をすべきかは自ずと見えてくる。蟹蔵さんは、ただただ木を植えるといいます。
まとめ
蟹蔵さんが伝えてくれたのは、叔父・叔母の時代の伊良部島は天国のようで、自分の子ども時代でも今の100倍綺麗だったこと、今は表面の透明さの下で生き物が消えていること、そしてその原因は地球のせいではなく、自然への愛が足りていないからだということでした。
死にかけて気づいた、もらうより与える方が楽だという気づきから、蟹蔵さんは今日も木を植え続けます。誰が正しい誰が悪いではなく、一緒に幸せを見つければ自然は回復する。それが、蟹蔵さんからのメッセージです。
【警告】このままでは本当に終わる…海の異変の正体 蟹蔵
EM life 宙・有限会社ソウ意匠
住所:岐阜県揖斐川町谷汲名礼1381−2
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