300年続く醸造の世界へ――三重・鈴鹿の豆味噌とたまり醤油

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EM さやか菌まみれ
300年続く醸造の世界へ――三重・鈴鹿の豆味噌とたまり醤油

100年物の樽、5年かけて育てる豆味噌、そして加熱しない生のたまり醤油。三重県鈴鹿市にある東海醸造株式会社を訪ねると、時間と微生物が主役の、静かで深い発酵の世界が広がっていた。今回お話をお伺いしたのは、醸造家の本地猛さんだ。


100年使い続ける杉の木桶

蔵の中に並ぶのは、大正6年頃に作られたという杉の木桶。100年以上現役で使い続けられています。


なぜ杉なのか。本地さんによると、杉は耐久性があり変形しにくいこと、そして木のエキスが出にくいことが理由だといいます。木のエキスが強い素材だと、味噌の香りや風味を邪魔してしまうためです。また、丸太を横に輪切りにした板目の木桶は、中の水分が外に逃げにくい構造になっているとも教えてくれました。


桶は坂倉など地域の醸造家同士でやりとりされながら流通してきた歴史もあります。ただ、桶を編む職人が今はいなくなっており、現在は全国の醸造家が集まって復活させようとするプロジェクトが動いているといいます。

豆味噌の仕込み――東海三県の伝統製法

仕込み桶の中には大豆と食塩だけ。そこに石を乗せるシンプルな構造です。


東海醸造の豆味噌は、大豆全量を麹付けして「味噌玉」にしてから仕込む製法をとっています。本地さんは、東海三県は高温多湿のため、炭水化物系の原料を使うと過発酵しやすいと説明してくれました。大豆を玉にして空気を抜き、乳酸発酵でpHを下げることで雑菌をブロックするバリアを作る、これが東海三県の伝統製法だといいます。


仕込んだら、あとは自然任せ。空調はなく、夏の暑さも冬の寒さもそのまま受け止めます。東海醸造では5年間熟成させるといいます。夏に微生物が活発に発酵し、冬はその化学物質が反応・熟成する。その繰り返しを5年間続けるのが天然醸造です。


5年物の豆味噌――色・香り・旨味の変化

豆味噌は時間が経つほど色が濃く黒くなっていくといいます。塩分は11〜13%あるものの、熟成が進むと「塩が枯れる」感覚で、食べた時のとがりが和らぐと本地さんは教えてくれました。さらに発酵で生まれる酵素が塩味をマスキングする作用もあるといいます。


また、5年物には旨味成分が結晶化した白いチロシンが現れます。3年物と5年物では色も、このチロシンの量も明らかに違うと本地さんは言います。豆味噌はタンパク質を基質とした酵素分解型の発酵であるため、米味噌に比べて旨味成分が豊富で、加熱してもコクが飛びにくく、味噌煮込みや土手煮に向いているといいます。


その豆味噌は鈴鹿市内のすべての保育園・幼稚園・小中学校の給食に使われています。鈴鹿産の大豆で、鈴鹿で醸造し、鈴鹿の子どもたちに還元するという地産地消の取り組みだと教えてくれました。

生のたまり醤油――100年の樽から生まれる一滴

豆味噌を仕込む過程で自然に分離してくる液体が、たまり醤油です。東海醸造では加熱をせず、そのまま瓶詰めして出荷しているといいます。これを「生引き(きびき)」と呼ぶと本地さんは教えてくれました。


一桶から取れるのは最大150L程度。大豆と食塩だけで作られた、濃厚な旨味のたまりです。


使い方については、刺身醤油として使うだけではもったいないと本地さんは言います。


煮物や金平ごぼう、肉じゃがへの隠し味として数滴加えるだけで旨味がぐっと増すといいます。チャーハンの仕上げに鍋肌へひと回しするのが本地さんのお気に入りだとも教えてくれました。


三重県では桑名のしぐれ蛤や伊勢うどんのたれにも使われており、たまりは地域の食文化に深く根ざしているといいます。

まとめ

東海醸造の豆味噌とたまり醤油は、100年以上使い続ける杉桶と、代々住みついてきた微生物たちが作り出したものです。


空調もなく、石を乗せるだけのシンプルな仕込み。5年という時間をかけて、自然の力だけで旨味が積み重なっていく。本地さんが繰り返したように、醸造家が作るのはもちろんだけれど、本当に作っているのは微生物だという言葉が、訪問後もずっと耳に残ります。

すずかの漉味噌 1kg(東海醸造)

すずかの漉味噌 1kg(東海醸造)

5年熟成の豆味噌が旨すぎた…300年蔵元のこだわり 東海醸造(株)醸造家 本地 猛さん


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住所:岐阜県揖斐川町谷汲名礼1381−2

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